債務整理後、住宅ローンは組める?審査への影響と通過のポイントを弁護士が解説

債務整理後、住宅ローンは組める?審査への影響と通過のポイントを弁護士が解説

債務整理

「債務整理をしたら、もう一生マイホームは持てないのだろうか…」
「ブラックリスト期間が終われば、すぐに住宅ローンは組めるようになる?」
「債務整理の過去が、住宅ローンの審査にどう影響するのか、具体的に知りたい」

債務整理は、借金問題を解決し、生活を再建するための有効な手段です。しかし、その一方で、将来の大きなライフイベントである「住宅の購入」について、大きな不安を抱えている方も少なくありません。「債務整理をしたらずっとローンが組めない」という漠然としたイメージから、マイホームの夢を諦めてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。

結論から申し上げますと、債務整理後でも、住宅ローンを組むことは十分に可能です。ただし、それには一定の期間と、審査を通過するための正しい知識と準備が必要不可欠です。

この記事では、債務整理後の住宅ローンについて不安を抱えるあなたが、希望を持って未来の計画を立てられるよう、法律の専門家である弁護士監修のもと、以下の点を詳しく解説します。

  • なぜ債務整理後にローンが組めなくなるのか?信用情報の仕組み
  • 【手続き別】住宅ローンを組めるようになるまでの具体的な待機期間
  • ブラックリスト解消後、審査通過のためにやるべき4つのステップ
  • 住宅ローン審査における注意点と、審査に通りやすくなるコツ
  • 債務整理と住宅ローンに関するよくある質問

この記事を読めば、債務整理後から住宅ローンを組むまでの具体的な道のりが分かり、今から何をすべきかが見えてきます。正しい知識を身につけ、着実にマイホームの夢へと歩みを進めましょう。

なぜ債務整理後にローンが組めない?「信用情報」と審査の仕組み

債務整理後に住宅ローンが組めなくなる最大の理由は、あなたの「信用情報」に「事故情報」(いわゆるブラックリスト)が登録されるためです。

銀行などの金融機関は、住宅ローンの審査を行う際に、必ず信用情報機関に照会をかけ、申込者の過去の返済能力や信用度をチェックします。その際に「債務整理をした」という記録が残っていると、「この方への高額な貸付はリスクが高い」と判断され、審査に通ることが極めて困難になるのです。

つまり、住宅ローンを組むためには、この事故情報が信用情報機関から削除されるまで待つことが、絶対的な大前提となります。

【手続き別】住宅ローンを組めるようになるまでの「待機期間」

では、事故情報が削除されるまで、具体的にどのくらいの期間待つ必要があるのでしょうか。この期間は、どの債務整理手続きを行ったかによって大きく異なります。

手続きの種類信用情報の登録期間期間のカウント開始時点(起算点)手続き開始からローン検討までの
合計期間(目安)
任意整理約5年借金を完済してから約8年~10年後
個人再生約5年~7年再生計画の認可決定から約5年~7年後
自己破産約5年~7年免責許可決定から約5年~7年後

任意整理の場合(完済から5年)

任意整理は、和解後の返済期間が通常3年~5年あります。信用情報への登録期間(約5年)は、この返済を全て終えた「完済日」からカウントが始まるため、手続き開始から合計で8年~10年程度の待機期間が必要になります。

個人再生・自己破産の場合(決定から5~7年)

個人再生や自己破産は、裁判所での手続きが完了した時点(再生計画認可決定、免責許可決定)から期間のカウントが始まります。そのため、手続き開始からの合計待機期間は、登録期間と同じく約5年~7年となります。銀行系の信用情報機関(KSC)は、官報情報を参照するため、他の機関より登録期間が長くなる傾向があります。

ブラックリスト解消!住宅ローン審査を通過するための4つの準備ステップ

上記の待機期間が経過し、信用情報の事故情報が削除されたとしても、それだけですぐに住宅ローンの審査に通るわけではありません。むしろ、ここからが本当のスタートです。金融機関からの信頼を回復し、審査を通過するためには、計画的な準備が必要です。

Step1:【必須】自身の信用情報を開示して確認する

待機期間が過ぎたら、まず最初に行うべきは、CIC・JICC・KSCの3つの信用情報機関すべてに情報開示請求を行うことです。これにより、事故情報がきちんと削除されているか、他に問題のある情報が残っていないかをご自身の目で確認します。万が一情報が残っていた場合に、ローン審査に落ちてその履歴が残る、という事態を防ぐための重要な作業です。

Step2:「クレジットヒストリー(クレヒス)」を育てる

事故情報が消えた直後のあなたの信用情報は、履歴が何もない「スーパーホワイト」と呼ばれる状態です。金融機関から見ると、「過去に何かあった人」なのか「これまで一度もカード等を使ったことがない人」なのか判断がつきにくく、かえって審査に慎重になる場合があります。

そこで、良好な信用履歴(クレジットヒストリー、通称クレヒス)を意図的に作っていく必要があります。

  1. クレジットカードを作成する: 比較的審査が通りやすいとされる流通系(デパートやスーパー)などのカードに申し込み、まずは1枚作成します。
  2. 少額利用と期日通りの返済を繰り返す: 作成したカードで毎月数千円~数万円程度の買い物をし、必ず期日までに一括で支払います。これを最低でも1年~2年続けることで、「この人はきちんと支払いができる人だ」という良好な記録が積み重なっていきます。

この地道な「クレヒス修行」が、住宅ローンの審査において非常に重要になります。

Step3:自身の「属性」を高める

住宅ローンの審査では、信用情報だけでなく、申込者自身の「属性」、つまり返済能力や信頼性も厳しく評価されます。以下の点を意識して、ご自身の評価を高めていきましょう。

項目審査で有利になるポイント
勤続年数同じ勤務先に3年以上、できれば5年以上勤務している。安定性・継続性の証明になる。
雇用形態正社員であること。公務員や上場企業の社員は特に評価が高い。
年収年収が高いほど有利。また、返済負担率(年収に占める年間ローン返済額の割合)が低いことも重要。
健康状態団体信用生命保険(団信)に加入できる健康状態であること。

Step4:頭金をできるだけ多く準備する

頭金は、あなたが計画的に貯蓄できる人間であることを示す、何よりの証拠です。物件価格の最低でも1割、できれば2割以上の頭金を用意することで、金融機関からの信頼度は格段に上がり、借入額を減らすことで審査にも通りやすくなります。

住宅ローン審査における注意点と通過のコツ

準備を整えた上で、いよいよ住宅ローンに申し込む際の注意点と、審査通過の可能性を高めるためのコツをご紹介します。

注意点①:「社内ブラック」を避ける

信用情報機関の情報が消えても、あなたが債務整理の対象とした金融機関やそのグループ会社(銀行、カード会社、保証会社など)には、独自の顧客情報(いわゆる「社内ブラック」)が半永久的に残っています。 これらの金融機関に申し込んでも、審査に通る可能性は限りなくゼロに近いため、必ず避けるようにしましょう。

注意点②:「官報」の影響

個人再生や自己破産をすると、その事実が国の機関紙である「官報」に掲載されます。銀行系の信用情報機関であるKSCはこの情報を参照するため、特に銀行系のローン審査では影響が出る可能性があります。この情報がKSCから消えるまで、約7年間は待つのが無難です。

コツ①:配偶者の信用情報を活用する

もしあなたの配偶者に債務整理の経歴がなく、安定した収入と良好な信用情報がある場合、

  • 配偶者単独の名義でローンを組む
  • 収入合算やペアローンを組む

といった方法で、審査に通る可能性を高めることができます。ただし、あなたが連帯保証人になることはできません。

コツ②:「フラット35」を検討する

フラット35は、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供する長期固定金利の住宅ローンです。一般的な銀行ローンとは審査の基準が異なり、個人の信用情報をあまり重視しない(KSCの情報を照会しない)傾向があると言われています。そのため、過去に債務整理の経歴がある方でも、現在の返済能力(年収や勤続年数など)が基準を満たしていれば、審査に通る可能性があります。有力な選択肢の一つとして検討しましょう。

コツ③:複数の金融機関に同時に申し込まない

ローンへの申込履歴も、信用情報に6ヶ月程度登録されます。短期間に複数の金融機関に申し込むと、「お金に困っているのでは?」と見なされ、審査に不利に働くことがあります。申し込む際は、1~2社に絞って行いましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 債務整理中ですが、どうしても今、住宅ローンを組む方法はありますか?

A. 残念ながら、信用情報に事故情報が載っている期間中に、ご自身の名義で住宅ローンを組むことは、ほぼ不可能です。まずは債務整理の手続きを誠実に完了させ、信用情報の回復を目指すことが先決です。

Q. 妻が債務整理をした場合、夫である私の住宅ローン審査に影響しますか?

A. あなたが単独でローンを組む場合、配偶者の信用情報が直接影響することはありません。ただし、あなたが妻を連帯保証人に立てたり、ペアローンを組んだりすることはできません。

Q. 信用情報が回復した後、申込書の「過去の債務整理歴」にはどう書けばいいですか?

A. 申込書にそのような告知義務欄がある場合、正直に申告する必要があります。ここで虚偽の申告をすると、後で発覚した場合に契約を取り消される(一括返済を求められる)リスクがあります。正直に申告した上で、現在の健全な家計状況をアピールすることが重要です。

まとめ:債務整理後の住宅ローンは可能!計画的な準備が夢を叶える鍵

債務整理をしたからといって、マイホームの夢を諦める必要は全くありません。住宅ローンを組むことは、十分に可能です。

ただし、そのためには魔法のような近道はなく、

  1. 信用情報の事故情報が消えるまで、辛抱強く待つこと(5年~10年)
  2. その間に、頭金を貯め、安定した勤務を続け、自身の信用度を高めること
  3. 事故情報が消えたら、情報開示で確認し、クレヒスを育て始めること
  4. そして、適切な金融機関(債務整理の対象先を避ける、フラット35など)に申し込むこと

という、地道で計画的なステップが不可欠です。

債務整理は、あなたの人生の終わりではなく、健全な経済生活を取り戻すための始まりです。借金問題を専門家である弁護士に相談し、一日も早く解決することが、結果的に、あなたがマイホームという次の夢に手を伸ばすための、最も早いスタートラインにつくことにつながるのです。